好奇心とマクラコトバJ

腕時計を見ると長針が5分進んでいた

競馬にビギナーズラックで挑む

 

ビギナーズラック

経験が乏しくてもその分野の勝負に勝ててしまう奇跡の恩恵。

 

ふと思った。

自分にはこれまでの人生でまだ使っていない「幸運」の貯蓄があるのではないかと。

 

なにしろツイていない日の連続である。

雨は折り畳み傘を持たないときに限って降るし、貯金は酒代に消えていく。

仕事も早く帰れそうな日に急を要する案件が降ってくるし?

 

そう考えると悪運と相対的に幸運の貯蔵量も増えているのではないか。

使ってないだけで。

 

なるほど、それなら辻褄が合う。道理でおかしいと思ってたんだ。
こんなに毎日がぱっとしないなんてさ。

使ってないだけで。 

 

そこで僕は考えた。
いま自分が温存するラックの貯金がどれほどあるのか確認しようじゃないかと。

 

できればわかりやすく数字で見えるようにしたい。
そのため幸運を実感するには金銭に換金されることが望ましい。
苦労を要せず速やかに報酬をゲットする。

 

これは一種の実験なのでる。

決してあさましい動機ではないことは承知して頂けるだろう。

 

これらの条件に当てはまる換金方法を考えて、思いつくのがひとつある。

競馬だ。

 

手段がギャンブルに至るのは自然な流れだが、賭博にしたって種類はいくつもある。
どうせなら普段の自分に縁がなさそうなモノを選びたい。

 

それゆえの競馬だった。馬券。買ったことはない。
競馬に関しての知識とえいば?

 

そこにはワンカップで昼間から出来上がったどこぞのオッチャンが登場する。

しわの入った競馬新聞には赤えんぴつで、丸だかバツだかが書き込まれている。
片耳には携帯ラジオから伸びるイヤホンが収まり、

食い入るように競走馬をにらみつけている。

 

足もとに花弁みたく散らばるのは負けて紙くずになった祈りの残骸(馬券)。

 

以上が、競馬に関する知識である。
知識?そうですね。知識ではありませんね。すみません。

 

そもそもギャンブルだなんて比較的ポピュラーと思えるパチンコだって

プレイしたことはない。
賭け事なんてせいぜい大昔に宝くじを何回か買ってハズしたぐらいである。

 

日常においてアプリのゲームに課金することもないし、

健全、といえば聞こえは良いし実際まっとうだが、

リスクある娯楽を楽しまない自身に対し、味気なさを覚えるのも事実だった。

 

なにごとも挑戦だ。

こうして競馬のルールをざっくり学んだ僕は、初めての競馬場に赴いた。

 

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実験の舞台は川崎競馬場

 

まずどこの競馬場に行こうかと迷った。

関東には想像よりは多い数の競馬場があるんですね。

 

迷いのすえに、日程の都合もあって

平日に開催する川崎競馬場でトライすることに決定。

京急大師線・港懲駅から歩いて10分くらいで目的地にたどり着いた。

 

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ルーレットで幸運を換金しよう☆

検証にあたり馬券の買い方までは一通り学んだが、しょせんは付け焼刃の知識である。
当日出る馬の中からどれを選べばいいのか、いまいちわからない。

 

だがデータに惑わされていては、ただの場違い素人のままである。
なにを右往左往しているのだ。

幸運を貯蓄していると思い立ち、競馬場に来たのは自分の意志ではないか。

 

ここは幸運の発露をブーストさせる装置として、

スマホにルーレットのアプリをおとすことにした。

 

なにも使わず直感で挑むこともありだったが、

勘というのは、その時湧く雑感が幾重にも入り混じるものだ。

 

馬券がハズれたとして、きっとその焦りは自信を陰らせた挙句、

目的を忘れたゲームになっていくに違いない。

 

神頼みならば予想の数字に感情がこもらない。

あるのは1から最大12番までのドライな数字の群れ。

ルーレットならば幸運を発揮するうえで、

感情という不純物を寄せ付けない媒介として、
淡々と勝利をもたらしてくれるだろう。

 

客席は想像していたよりもずっと清潔だ。

こびりついていたイメージ、祈りの残骸(負け馬券)も散らばってなかったし、

そんな光景、今では『こち亀』の両津勘吉が負けて地団太を踏むシーンででしか

 お目にかかれないようだった。

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馬券の買い方は「単勝」。すなわち一着目の馬を当てる賭け方だ。

買い方には複勝枠連とか、いろんな種類があるが、

そこはシンプルイズベスト。まずは王道で勝ちに行きたい。

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人生一発目の馬券購入

買った!

ついに人生で初めての馬券を買った。

ルーレットによる導きはナンバーファイブ。

啓示を迷うことなく信じてマークシートの5番を示すマスを塗り潰す。

 

掛ける金額が100円。しょぼいだって?

いや、気持ちはわかる。

だけどもゲーセンにふらっと立ち寄って筐体ゲームに飲み込ませる100円玉。

同じ値打ちの硬貨でも得られる新鮮味はまるで違う。

 

いざ川崎。

頼むぞスーパークルーズ!

 

結果は・・・

 

はずれ!

 

なんでや・・・

ロジックは完璧なはずだった。

まあ一発目であるから仕方がない。

 

競馬の神様から不安の気持ちを見透かされてしまったのだろう。

次こそはという気持ちで足はパドックへと向かった。

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第3Rトラストキック君に決めた!

キャラクターを選択してください

パドック。それは次のゲームで走る馬たちのお披露目の場。

ここで馬たちのコンディションをチェックできるというわけだ。

 

ぐるぐる歩く馬たちを見ていると確かに馬たちによって

微妙に特徴が異なることが分かる。

 

体格の違い、歩く速度の違い、気性の荒い馬、おとなしい馬。

これはあれだ。格闘ゲームなんかで対戦させるキャラクターを選ぶ作業に似ている。

 

パドックにて真剣に勝負を預けることができそうな馬を選ぶギャラリーの人々。

現金を賭けるのでる。適当な気持ちで決められるわけがない。

 

そんな神妙な気持ちの中、

僕は静かにルーレットを回す。

結果は8番のトラストキック。

君に100円を託そうじゃないか。

 

でも本当は気になったのは10番のノットソーキュート!

名前・・・恰好いい!

『ノットソーキュート』‼ それが俺の「スタンド能力名」だ!

と言わんばかりに絶妙なゴゴゴ(自己主張)を醸し出している馬だ。

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神様の言う通り

 

ノットソーキュートは確かに魅力的な馬だ。

だがここでホイホイ選び方を変えると一貫性を損ない

ぐだぐだな展開になることは目に見えていた。

 

1度決めたらまっとうするしかねぇ。

賽は振られた。トラストキックで征く。

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結果は・・・。

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結果は5着目!

駄目だ。全然届かない。

 

そこで僕は初めてルーレットで選ぶ無謀さについて考えた。

確率は単純に1/10。その中から何のデータもなしに1着になる馬を当てる。

 

馬に関する情報を知らずに選ぶだなんて困難な道なのではないのか。

データから勝率を読み取ることを放棄すること、

これ競馬の楽しみ方ではないんじゃないかと。

 

様々な不安を帯びた感情が胸中にわきでてくる。

その考えはもっともだ。だが、ここでやり方を変えて

ごく普通の素人の過ごす競馬場での1日を終えて

報酬が残らなければ何が残るというのだろうか。

 

あくまでもルーレットでのビギナーズラックにこだわりたい。

そんな気持ちを再認識すると再びパドックへ足を運ぶのだった。

(もはやパドック見る意味がないのだが)

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第4ラウンド。サイバイバルオオオク。

 

今度こそだ。馬券を握りしめてレースを見守る。

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着順は6位。まったくもって圏外である。

 

第5ラウンド5。チャーミングリボン。

今度こそだ。

 

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結果は....。

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第8位!

 

まったくかすりもしない

この展開に負けた馬券をただ茫然と握りしめる。

 

なぜだ...幸運は誰よりも温存しているはずだった...。

まだ自分の運というものが十分に溜まっていなかったようだ。

 

もう一度再選するべきか?

そのことを考えたが今日に限っては満足してしまっていた。

 

かくして初めての競馬デビューは敗北で終わった。

 

だがいずれはリベンジを誓って競馬場に行くことを想う。

 

 

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タイムスリップ川崎競馬場

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