好奇心とマクラコトバJ

腕時計を見ると長針が5分進んでいた

「新しい地図」のおとうさん達 香取慎吾と稲垣吾郎の父親像

器用なお父さんでなければいけませんか? 
香取慎吾の『凪待ち』と稲垣吾郎の『半世界』を鑑賞して

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みなさん。こんにちは。
最近の話ですが香取慎吾が主演する『凪待ち』を見ました。
大切な人を失ったとき、残された者たちは現実とどう向き合えばいいのか。
それぞれの過去に選んだ選択肢への後悔。未来への葛藤。
BGMが流れない現実世界の中で、もがきながらも前へ進もうとする物語。

nagimachi.com

こういった暗いトーンの人間ドラマ作品はとても好物です。
悲劇の転落。精神の放浪。険しい道のり。そして静かで確固たる復活。
王道のシナリオだろうと、人間賛歌は好きなテーマだから仕方ありません。

本作の魅力はなんと言っても主人公の郁男を演じる香取慎吾
既存のイメージを一新する人間臭さ。ギャンブルへの依存を抱えた彼が、
見失った生きる指針を、恐る恐るとした足取りで手に入れようとする。  

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凪待ち 日刊ゲンダイ北海道版

あれ、でもこういう父親像。近い過去で見たことがあるぞ。
そうだ。2019年の2月に公開された稲垣吾郎が出演する『半世界』だ。

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©2018 半世界 FILM PARTNERS

とある日本の田舎。父親から受け継いだ家業、
備長炭をつくる日々を送る稲垣吾郎が演じる男・紘。絵に描いたような職人気質。
悩みの種は中学生の息子との間に抱える不和や、雲行きが怪しい商売に対する焦り。
それらをじっと噛みしめる。
ある日、古い友人である瑛介(長谷川博己)が前触れもなく地元に戻ってくる。
華々しいはずの自衛隊の職を捨てた彼との交流が深まるにつれて、
それは紘にとって人生を見つめなおすきっかけになっていく。

hansekai.jp

『凪待ち』の郁男。恋人の連れ子の娘との関係はまずまず良好だが、
人からの意見やギャンブルへの欲求に流されやすい。
『半世界』の紘。妻と共に備長炭を長年作り続けて仕事への責任感はあるが、
息子の学校生活への関心を持つことから逃げている。

どちらも父親像としては、不器用という意味で弱さを抱えています。
香取慎吾稲垣吾郎かつてSMAPに所属していたときには想像が難しい役柄です。

そんな人間のネガティブな部分を含んだ役を、2人は力強く演じています。
内容のテーマ上、派手なエンターテイメント作品として売り出すの厳しいかもだが、
もとがアイドルの人間の出演だから、という理由で食わず嫌いの感情を向けるのは、
とてももったいないですね。

これらの作品は2人が俳優として本腰を入れることの決意の表れだと思いますし、
キャリアを積み重ねていく将来、振り返った時には重要な位置にあるはずです。


今年2019年は草彅剛が出演する『まく子』がありますが、鑑賞していないため、
比較する作品としては使用しませんでした。
あらすじを読む限り、この映画では草彅剛が主人公の男の子の、
クセの強い父親を演じているみたいなので、ちょっと興味が湧いてきます。

makuko-movie.jp



 

 

埼玉県・裏ステージ「首都圏外郭放水路」をめぐる


非常に私的な出だしである。
幼いころに観ていた『仮面ライダー555(ファイズ)』。
その最終回に現れた謎の空間。
それは辺り一面コンクリートでつくられた広大な空洞。
神殿を思わせる地面と天井をつなぐ柱の数々。

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あまりに異質な光景は頭に焼き付くも、
記憶の奥底に仕舞われて長らく忘れ去っていた。

光景の正体は大雨など川の増水時に、
洪水を防ぐために水を逃がすために建造された首都圏外郭放水路

場所は埼玉県春日部市に位置している。
柱がたくさん連なる空間は「調圧水槽」。

河川から引いてきた水の勢いを調節する役割があるという。
今回は以前から訪れてみたいと思っていたスポットに訪れたので感想を記載する。

 

意外に簡単に行ける!? 神殿への道のり
首都圏外郭放水路を管理する機関が拠点に置く庄和排水機場。

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見学の窓口のある庄和排水機場

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その施設のなかに地底探検ミュージアム 龍Q館は存在する。
ここは地下神殿のことを世間に発信するための博物館だ。
見学会もこちらの職員が主催しており、ホームページから予約を申し込めば
簡単に見に行くことができる。

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www.gaikaku.jp

今回選んだのは地下神殿「調圧水槽」と巨大竪穴「第1立坑」の
ロケーションを2本立てで楽しめるという地下神殿コース。

コースは他にも排水の為のポンプをメインに据えたポンプコースや
(リピーターに受けそうなニッチな企画だ)
巨大竪穴「第1立坑」にヘルメットとハーネスを装備して、
奥まで見に行けるという立抗体験コースがあり、これがまた魅力的。

ただし予約サイトのカレンダーにはオーソドックスな地下神殿コースばかりで
他コースの開催日はかなり少ない。というよりポンプコースはまだいいが、
スリルいっぱいで楽しそうな立抗体験コースが催される日が皆無!
(確認できるスケジュール範囲内において)

たまたまこの記事を書いているときの話なので、
ふとしたタイミングで予約の募集が始まるのだろう。
レアリティが上がると変に好奇心が刺激される(笑)

 

ロケ地としては絶対に一度は利用したい場所

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映画『翔んで埼玉』のロケ地としても使用されたという

龍Q館の2階。
受付所までの通路の壁には掲げられた2019年の邦画を代表する迷作のひとつ。
実写版『翔んで埼玉』のポスターが当然のように鎮座。
映画は埼玉県には見どころがないという俗説を題材にサイタマをディスりまくり
逆に埼玉県への愛を推しだしたことで記憶に刻んだ危険な作品だ。

でもですよ。調圧水槽がある時点で勝ち組都道府県だと思いません?
この地下神殿の特異的な景観は日本の中でも唯一無二。
それゆえに映像業界人ならば一度はここを活用したフィルムを作ってみたいんじゃないかと考えるのは邪推でしょうか。

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映像作品で登場した歴史の系譜

脇の年表にはこれまでロケ地として、
どんな映像作品に登場してきたかを紹介する一覧が掲示されている。
自分が知っている作品はあとは『魍魎の匣』ぐらいかな…。
しかし特撮作品でのロケ地としての使用回数の多さは(特に仮面ライダーシリーズ)
非日常な光景を演出できる場所として重宝されている気がする。

 

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日本映画界をけん引する様々な著名人のサイン色紙を拝むことができる。
「ロケ地として最強の素材」これだけでも地下神殿の魅力は埼玉の強い武器だ。

あんな人やこんな人。この場所が映像業界において十分認知されていることが伺える。
まだまだ観光地としては知名度が高くない地下神殿であるが、いずれ何かしらのきっかけでバズり、観光客が怒涛の洪水のごとく押し寄せるのは想像に難くない。

 

「あの映画の強烈に印象に残った場所を見に行くことができるんだ」
という認識が広がっていくことだろう。
自分でも前日予約でも普通に間に合ったので、興味があるなら今のうちに行っておくのがチャンスだ。

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春日部、といえば...?

 

いざ地下神殿へ

地下への行き方はガイドの人を先導にして、狭い階段を降りていく。
なお、観光地ではないのでエレベーターという文明の機器はない。

もちろん安全面を配慮してなのだろう。
『自力で』階段を降りれる人だけが行くことができますよと、
何度か強調してくるガイドの人の注意勧告が妙に印象に残る。

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調圧水槽へ下る入口

 

階段を降りきった先に広がる光景は...。

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広い...。ただひたすらに広大なコンクリートの世界が広がっていた。
控えめな照明の明かりで照らされる無機質な柱と壁。
それが地下神殿と呼ばれる由来である神秘的なオーラを漂わせていた。

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柱の群れと隣接する巨大な穴「第1立抗」が、これまた異様な存在感を出す。
ロープと柵で近づくことができないようになっているが、
落ちたら運良くて大けがで済む、といえる高さの落とし穴になっている。

世の中には巨象恐怖症なる恐怖症を抱える人たちがいるという。
字のごとく大きな銅像・建造物などを見ると不安や恐怖感を掻き立てられるというものだ。
そうした人にとってはキツイ空間に違いない。

地下は気温が低く肌寒い。暑くなる季節に訪れるときも、
なにか羽織るものを持参するといいかもしれない。

 

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巨大竪穴・第1立抗

調圧水槽の見学が終わると、下ってきた階段を再度上り、
場所は移って第1立抗を見下ろすことができるスポットに。
足場は建築現場で見かけるような薄めの鉄板なのがスリルを誘う。

これが第1立抗をメインに周る「立抗体験コース」ならば、
さらに奥まで迫ることができるらしいのだが、
今回はこのアングルのみで迫力を堪能することとなった。

見学のプログラムは以上である。

見学会に来ていた人たちには中国系と思しき外国の家族が2組ほどいた。
午前中の回に参加している人達にも同様の家族らしき集団を見たので、
向こうの人にとって、龍Q館はけっこう知られた観光名所なのかもしれない。

自分なんかが見に来た動機としては「なんとなく」という、
それ以上・以下でもない感情が主に占めるが、この家族連れたちは
旅行会社が手配する観光バスに乗ってくるツアー客というわけでなく、

自分たちで市バスを使ってわざわざ訪れるのだから、
それはある程度の強い熱意がなければできる行動ではないと思った。

繰り返しになるが、
映画『翔んで埼玉』では見どころない県として自虐されているが、
潜在的な観光資源として地下神殿は有効だと思うし、
大きな脚光を浴びる日も近いはずだと考える。

 

  

究極.映えのタピオカ写真をめざす話

タピオカミルクティー
スイーツである。いまの日本の若い女性たちの間で流行するスイーツだ。

 

それも容器を持ち歩くだけでファッションの一部としても
アピールできるというのは驚きだ。

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タピオカを楽しめる関連店も増えているらしく、
通い慣れた街中には見慣れぬ名前のカフェが生まれている。
たいてい店のレジ前にはお客が列を作って並んでおり、
新たな食文化として根ざす勢いだ。

 

で、あるからこそブームの裏側で起こりがちな弊害。
記事で目にしたのは、飲みきれないタピオカ飲料を
道端にポイ捨てされているというものだ。

 

www.bengo4.com

紹介する現場風景の写真には、
中身のタピとティーがたっぷり残るカップの数々が写る。

 

ときどき問題視される話題として、
消費者が流行にあやかり買ったはいいが、持て余して捨てるやつである。
これが食べ物だったり、動物だったりすると後味の悪さがこみ上げる。

 

ポイされる原因は無論、一部の消費者のマナー意識欠如にあるわけだが、
それに拍車をかけるのが「飲み歩き」するとして
街中でカップを捨てづらいというのもあるだろう。

 

自販機の脇にあるごみ箱。空き缶とペットボトル、たまに空き瓶。
この3種専用のごみ箱の設置が大半だ。

 

タピオカを満たすのはプラスチックのコップ。
わざわざ「燃えないゴミ」専用のごみ箱を探して捨てるのが
面倒くさいからポイ捨てする心理があるなら、その心意気0点である。
空き缶専用のごみ箱の口にカップをシュートして塞ぐヤカラも0点。

 

そこで考えた。
どうしたらミルクティーカップがポイ捨てされずに有効活用されるだろうかと。
カップ自体はオシャレのアイコンとして利用されている。
カップを写した写真をSNSに上げる流行がすでにある。

 

タピオカの容器にオシャレの価値があるなら、それを応用する手はないではないか。
このヒントをもとに関連して浮かぶもの。それは。
iichiko(いいちこ)の広告写真だ。

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三和酒類が販売する麦焼酎の銘柄。
宣伝する写真を多くの人が目にしたことがあると思う。
たとえば地下鉄の通路で。商業施設のなかで。
ナショナルジオグラフィックの見開きページで。

 

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写っているのは雄大な自然の景色のなかにポツンと置かれる
1本の「いいちこ」のボトル。
その対比の構図が、そっけなさ全開のボトルの存在感を
逆に色鮮やかに訴えてくる素晴らしい仕上がりだ。

 

添えられる詩の一節もまたいいっ!!
この写真に映えるボトルのように
タピオカミルクティーの空きカップを演出すればどうだろう

 

フォトジェニック効果は抜群。
カップの利用価値は跳ね上がり、不法ポイ捨てして連中は、
自らの行いの恥ずかしさのあまりに自ずと悶死。

 

検証のためにもまずはタピオカを用意しなくてはならない。
向かったお店は最近見かける機会が増えたティーカフェ店
「Gong Cha ゴンチャ」。
ネットで見るのですが男の人がタピオカを一人で買うために列に並ぶ、
これがとても恥ずかしいという記事を読んだことがあります。
とても共感できる気持ちです。

 

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街で見かける頻度が増えた「貢茶 Gong cha」 

 

でも普通に並んで買いました。

 

買ったのは「ブラックミルクティー+パール」
パール?パールってなんだ?
一応タピオカって記載してあるが念のためググってしまったではないか。

 

初めてのタピオカドリンク。
ここで食レポをしても話は脱線する一方なので割愛しよう。

 

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タピオカはおいしく頂きました。
このカップを再利用するわけである。もちろん中身はちゃんと洗います。

 

ちゃんと洗ったのちは、目的地に辿りつくまではカバンの奥底にしまいます。
これで空いた片手にカップを握りしめて、町中を歩いたら最期、
かわいい女子とは自分が異なる人種である「事実」を、
冷たい視線という魔女狩りに遭い思い知ることになるだろう。

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近所の公園のベンチ

とりあえず近所の公園風景をカメラに収めてきたぜ。
ベンチにさりげなく置かれたタピオカドリンクの容器。
こうしてみると太いストローが良いアクセントになっている。

 

即興で考えたそれっぽいポエムを挟み込んで
「Gong cha」の字を入れれば、なんとういうことでしょう。
あっというまにiichiko化。
すなわち「イイチカライズ」されたフォトの完成だ。

 

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近所の公園の腰掛け

いかがだろうか。
殺風景な人気のない風景も「イイチカライズ」することによって、
たちまち味のある?写真が完成する。

しかも驚くことに何枚の作品を作るにしても
必要な空カップはたったのひとつで足りるのである。
これはコスパ的にも魅力がある。

 

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日枝神社の階段

映える素材選びに公園だけではつまらない。

 

そこで思いついたのは神社とタピオカのハーモニー。
選んだのは千代田区にある日枝神社だ。
 

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これを機に初めて訪れた日枝神社。最寄り駅の溜池山王駅
すぐそばに位置するのはニュース番組でよく見る建物。首相官邸だ。

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鳥居神社 千本鳥居

そしてそうこれ。これが撮りたかった。
たくさんの鳥居が並んでいる階段が見られるというので来てみたが、
想像以上に壮観であった。 

 

稲荷参道の千本鳥居。
この階段に置かれたタピオカのカップ
鳥居のみずみずしい赤との対比が独特な光景になっている。

 

撮影のコツとしては、いかに不審者と思われないようにか気を配ることだ。
間違っても空のタピオカップに一眼レフを向ける姿をさらして
痛々しい奴だと他の参拝者たちに引かれるわけにはいかない。

 

こうした点を気をつければ、だれでも「イイチカライズ」した
作品を作ることができるわけである。

いかがだろうか。
以上がタピオカップの有効な活用方法だ。
この活動が認知されればカップがポイ捨てされる頻度も減るはずだ。
みんなもカップを洗って山へ、海へ、街へ行こう。

 

 

 

 

 

 

 

競馬にビギナーズラックで挑む

 

ビギナーズラック

経験が乏しくてもその分野の勝負に勝ててしまう奇跡の恩恵。

 

ふと思った。

自分にはこれまでの人生でまだ使っていない「幸運」の貯蓄があるのではないかと。

 

なにしろツイていない日の連続である。

雨は折り畳み傘を持たないときに限って降るし、貯金は酒代に消えていく。

仕事も早く帰れそうな日に急を要する案件が降ってくるし?

 

そう考えると悪運と相対的に幸運の貯蔵量も増えているのではないか。

使ってないだけで。

 

なるほど、それなら辻褄が合う。道理でおかしいと思ってたんだ。
こんなに毎日がぱっとしないなんてさ。

使ってないだけで。 

 

そこで僕は考えた。
いま自分が温存するラックの貯金がどれほどあるのか確認しようじゃないかと。

 

できればわかりやすく数字で見えるようにしたい。
そのため幸運を実感するには金銭に換金されることが望ましい。
苦労を要せず速やかに報酬をゲットする。

 

これは一種の実験なのでる。

決してあさましい動機ではないことは承知して頂けるだろう。

 

これらの条件に当てはまる換金方法を考えて、思いつくのがひとつある。

競馬だ。

 

手段がギャンブルに至るのは自然な流れだが、賭博にしたって種類はいくつもある。
どうせなら普段の自分に縁がなさそうなモノを選びたい。

 

それゆえの競馬だった。馬券。買ったことはない。
競馬に関しての知識とえいば?

 

そこにはワンカップで昼間から出来上がったどこぞのオッチャンが登場する。

しわの入った競馬新聞には赤えんぴつで、丸だかバツだかが書き込まれている。
片耳には携帯ラジオから伸びるイヤホンが収まり、

食い入るように競走馬をにらみつけている。

 

足もとに花弁みたく散らばるのは負けて紙くずになった祈りの残骸(馬券)。

 

以上が、競馬に関する知識である。
知識?そうですね。知識ではありませんね。すみません。

 

そもそもギャンブルだなんて比較的ポピュラーと思えるパチンコだって

プレイしたことはない。
賭け事なんてせいぜい大昔に宝くじを何回か買ってハズしたぐらいである。

 

日常においてアプリのゲームに課金することもないし、

健全、といえば聞こえは良いし実際まっとうだが、

リスクある娯楽を楽しまない自身に対し、味気なさを覚えるのも事実だった。

 

なにごとも挑戦だ。

こうして競馬のルールをざっくり学んだ僕は、初めての競馬場に赴いた。

 

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実験の舞台は川崎競馬場

 

まずどこの競馬場に行こうかと迷った。

関東には想像よりは多い数の競馬場があるんですね。

 

迷いのすえに、日程の都合もあって

平日に開催する川崎競馬場でトライすることに決定。

京急大師線・港懲駅から歩いて10分くらいで目的地にたどり着いた。

 

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ルーレットで幸運を換金しよう☆

検証にあたり馬券の買い方までは一通り学んだが、しょせんは付け焼刃の知識である。
当日出る馬の中からどれを選べばいいのか、いまいちわからない。

 

だがデータに惑わされていては、ただの場違い素人のままである。
なにを右往左往しているのだ。

幸運を貯蓄していると思い立ち、競馬場に来たのは自分の意志ではないか。

 

ここは幸運の発露をブーストさせる装置として、

スマホにルーレットのアプリをおとすことにした。

 

なにも使わず直感で挑むこともありだったが、

勘というのは、その時湧く雑感が幾重にも入り混じるものだ。

 

馬券がハズれたとして、きっとその焦りは自信を陰らせた挙句、

目的を忘れたゲームになっていくに違いない。

 

神頼みならば予想の数字に感情がこもらない。

あるのは1から最大12番までのドライな数字の群れ。

ルーレットならば幸運を発揮するうえで、

感情という不純物を寄せ付けない媒介として、
淡々と勝利をもたらしてくれるだろう。

 

客席は想像していたよりもずっと清潔だ。

こびりついていたイメージ、祈りの残骸(負け馬券)も散らばってなかったし、

そんな光景、今では『こち亀』の両津勘吉が負けて地団太を踏むシーンででしか

 お目にかかれないようだった。

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馬券の買い方は「単勝」。すなわち一着目の馬を当てる賭け方だ。

買い方には複勝枠連とか、いろんな種類があるが、

そこはシンプルイズベスト。まずは王道で勝ちに行きたい。

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人生一発目の馬券購入

買った!

ついに人生で初めての馬券を買った。

ルーレットによる導きはナンバーファイブ。

啓示を迷うことなく信じてマークシートの5番を示すマスを塗り潰す。

 

掛ける金額が100円。しょぼいだって?

いや、気持ちはわかる。

だけどもゲーセンにふらっと立ち寄って筐体ゲームに飲み込ませる100円玉。

同じ値打ちの硬貨でも得られる新鮮味はまるで違う。

 

いざ川崎。

頼むぞスーパークルーズ!

 

結果は・・・

 

はずれ!

 

なんでや・・・

ロジックは完璧なはずだった。

まあ一発目であるから仕方がない。

 

競馬の神様から不安の気持ちを見透かされてしまったのだろう。

次こそはという気持ちで足はパドックへと向かった。

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第3Rトラストキック君に決めた!

キャラクターを選択してください

パドック。それは次のゲームで走る馬たちのお披露目の場。

ここで馬たちのコンディションをチェックできるというわけだ。

 

ぐるぐる歩く馬たちを見ていると確かに馬たちによって

微妙に特徴が異なることが分かる。

 

体格の違い、歩く速度の違い、気性の荒い馬、おとなしい馬。

これはあれだ。格闘ゲームなんかで対戦させるキャラクターを選ぶ作業に似ている。

 

パドックにて真剣に勝負を預けることができそうな馬を選ぶギャラリーの人々。

現金を賭けるのでる。適当な気持ちで決められるわけがない。

 

そんな神妙な気持ちの中、

僕は静かにルーレットを回す。

結果は8番のトラストキック。

君に100円を託そうじゃないか。

 

でも本当は気になったのは10番のノットソーキュート!

名前・・・恰好いい!

『ノットソーキュート』‼ それが俺の「スタンド能力名」だ!

と言わんばかりに絶妙なゴゴゴ(自己主張)を醸し出している馬だ。

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神様の言う通り

 

ノットソーキュートは確かに魅力的な馬だ。

だがここでホイホイ選び方を変えると一貫性を損ない

ぐだぐだな展開になることは目に見えていた。

 

1度決めたらまっとうするしかねぇ。

賽は振られた。トラストキックで征く。

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結果は・・・。

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結果は5着目!

駄目だ。全然届かない。

 

そこで僕は初めてルーレットで選ぶ無謀さについて考えた。

確率は単純に1/10。その中から何のデータもなしに1着になる馬を当てる。

 

馬に関する情報を知らずに選ぶだなんて困難な道なのではないのか。

データから勝率を読み取ることを放棄すること、

これ競馬の楽しみ方ではないんじゃないかと。

 

様々な不安を帯びた感情が胸中にわきでてくる。

その考えはもっともだ。だが、ここでやり方を変えて

ごく普通の素人の過ごす競馬場での1日を終えて

報酬が残らなければ何が残るというのだろうか。

 

あくまでもルーレットでのビギナーズラックにこだわりたい。

そんな気持ちを再認識すると再びパドックへ足を運ぶのだった。

(もはやパドック見る意味がないのだが)

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第4ラウンド。サイバイバルオオオク。

 

今度こそだ。馬券を握りしめてレースを見守る。

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着順は6位。まったくもって圏外である。

 

第5ラウンド5。チャーミングリボン。

今度こそだ。

 

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結果は....。

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第8位!

 

まったくかすりもしない

この展開に負けた馬券をただ茫然と握りしめる。

 

なぜだ...幸運は誰よりも温存しているはずだった...。

まだ自分の運というものが十分に溜まっていなかったようだ。

 

もう一度再選するべきか?

そのことを考えたが今日に限っては満足してしまっていた。

 

かくして初めての競馬デビューは敗北で終わった。

 

だがいずれはリベンジを誓って競馬場に行くことを想う。

 

 

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タイムスリップ川崎競馬場

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