「新しい地図」のおとうさん達 香取慎吾と稲垣吾郎の父親像
器用なお父さんでなければいけませんか?
香取慎吾の『凪待ち』と稲垣吾郎の『半世界』を鑑賞して
みなさん。こんにちは。
最近の話ですが香取慎吾が主演する『凪待ち』を見ました。
大切な人を失ったとき、残された者たちは現実とどう向き合えばいいのか。
それぞれの過去に選んだ選択肢への後悔。未来への葛藤。
BGMが流れない現実世界の中で、もがきながらも前へ進もうとする物語。
こういった暗いトーンの人間ドラマ作品はとても好物です。
悲劇の転落。精神の放浪。険しい道のり。そして静かで確固たる復活。
王道のシナリオだろうと、人間賛歌は好きなテーマだから仕方ありません。
本作の魅力はなんと言っても主人公の郁男を演じる香取慎吾。
既存のイメージを一新する人間臭さ。ギャンブルへの依存を抱えた彼が、
見失った生きる指針を、恐る恐るとした足取りで手に入れようとする。
あれ、でもこういう父親像。近い過去で見たことがあるぞ。
そうだ。2019年の2月に公開された稲垣吾郎が出演する『半世界』だ。
とある日本の田舎。父親から受け継いだ家業、
備長炭をつくる日々を送る稲垣吾郎が演じる男・紘。絵に描いたような職人気質。
悩みの種は中学生の息子との間に抱える不和や、雲行きが怪しい商売に対する焦り。
それらをじっと噛みしめる。
ある日、古い友人である瑛介(長谷川博己)が前触れもなく地元に戻ってくる。
華々しいはずの自衛隊の職を捨てた彼との交流が深まるにつれて、
それは紘にとって人生を見つめなおすきっかけになっていく。
『凪待ち』の郁男。恋人の連れ子の娘との関係はまずまず良好だが、
人からの意見やギャンブルへの欲求に流されやすい。
『半世界』の紘。妻と共に備長炭を長年作り続けて仕事への責任感はあるが、
息子の学校生活への関心を持つことから逃げている。
どちらも父親像としては、不器用という意味で弱さを抱えています。
香取慎吾と稲垣吾郎。かつてSMAPに所属していたときには想像が難しい役柄です。
そんな人間のネガティブな部分を含んだ役を、2人は力強く演じています。
内容のテーマ上、派手なエンターテイメント作品として売り出すの厳しいかもだが、
もとがアイドルの人間の出演だから、という理由で食わず嫌いの感情を向けるのは、
とてももったいないですね。
これらの作品は2人が俳優として本腰を入れることの決意の表れだと思いますし、
キャリアを積み重ねていく将来、振り返った時には重要な位置にあるはずです。
※
今年2019年は草彅剛が出演する『まく子』がありますが、鑑賞していないため、
比較する作品としては使用しませんでした。
あらすじを読む限り、この映画では草彅剛が主人公の男の子の、
クセの強い父親を演じているみたいなので、ちょっと興味が湧いてきます。